全身の土台である足の3本のアーチをサポート
「足の骨ってこれだけたくさんの骨からなっているんですよ」と、ハッチェリー代表・広瀬勇人さん。オーダーインソールの店「ハッチェリー」は、ウォーキングからスポーツのあらゆるシーンまで足にこだわり、足元から体のバランスを整えて、体への負担軽減やケガを抑止するさまざまな商品やサービスを提供しています。
広瀬さんは小学4年生からスキー競技をはじめ、スキー競技の名門日本大学を卒業後、プロレース界へ活動の場を移してプロスキーヤーとして活躍しました。
スキーをする上で、足と直接触れるスキーブーツは重要なマテリアルで、選手時代、広瀬さんは足とブーツを合わせることに非常に苦労したそうです。そして、スキーヤーとしての自身の経験から“足と体のバランス”に着目し、自らインソールをつくりはじめ、理想のインソールを追求すべく試行錯誤を重ねました。
やがて広瀬さんは、選手とインソール開発者という2足のわらじを履き、オーダーインソールのお店「ハッチェリー」をオープン。スキーブーツのチューンナップをはじめ、さまざまな競技で活躍するアスリートのためのインソールをつくりはじめました。
そして現在「ハッチェリー」には、誰もが知るさまざまなスポーツの有名アスリートが来店するようになり、「ハッチェリー」のインソールを愛用する証として、店内にはサインや実際にとった足型がずらりと並んでいます。日本屈指のアスリートたちが信頼を置くインソールとは、いったいどのようなものなのでしょう。
「人の足は片側だけで28個の骨があります。これらの骨は筋肉や腱、靭帯によってゆるい弧を描く3本のアーチを構成しています。1本目が“内アーチ”と呼ばれる親指の付け根からカカトに向かって走る縦のラインです。2本目が、足の外側のアーチで、小指の付け根からカカトに向かって走る縦のライン。3本目が小指の付け根から親指の付け根をつなぐ横のラインです」と広瀬さん。
この3本のアーチがドーム型にゆるい弧の状態に保たれていると、親指の付け根と小指の付け根、カカトの3点に重心が分散され、しっかりと安定した姿勢を保つことができるのだそうです。そして3本のアーチには、クッション(バネ)の役割、バランスをとる役割があるのだと広瀬さんはいいます。
「足の裏は直立時の体を支える唯一の支点です。そのため、体の全体重や、動いたときの衝撃が足の裏にかかってきます。日常生活のさまざまな動きの衝撃や負担を受け止め、和らげるのが3本のアーチです。また、人は歩くときや走るとき、まずカカトで地面に着地してカカトから前に体重が移動し、足の指を使って地面を蹴り出すという一連の流れを行なっています。足裏の3本のアーチは、このときバネのように動き、体を前に運ぶ前進力になっているのです」
しかしこの足裏の3本のアーチがきちんとした状態で保たれているという人は少ないのだそうです。「生まれ持った立ち方で完璧なバランスを保持できている人はまずいません。昔の人と比べると、現代の人は歩くことが少なくなり、足裏の筋肉が発達しにくいということがあります。そのことによって足裏は“弱まっている”状態にあり、それはつまり、足裏のアーチ形状は崩れやすいということなのです。3本のアーチはセットなので、どれかひとつでも崩れると、他のアーチにも影響がでてきてしまいます」
「たとえば“扁平足”というのは、内アーチが崩れ、土踏まずが少なくなった状態です。それがさらに疲労や筋肉の緩みなどでアーチが落ちこむと、カカトの骨が内側に倒れ“外反扁平足”と呼ばれる状態になります。外反扁平足になると、浮き指になってしまったり、土踏まずの側面に靴があたりやすくなり靴擦れが起きてしまったりします」
このように、崩れてしまった3本の足裏のアーチを、補正するように開発したのが「ハッチェリー」のインソールです。「このインソールを使用すると、足裏の3本のアーチの動きが安定し、足元のすべての骨の隙間がバランスよく配列されるようになります。そうすることで足本来の機能である衝撃吸収=クッション、蹴り出す力=バネ、安定=バランスを取り戻すことができるようになるのです」
心臓部はコントロールカップ
ハッチェリーが作るインソールには「石膏型オーダーインソール」「クイックオーダーインソール」「バネインソール」の3種あります。「石膏型オーダーインソール」は、石膏で足型をとり、用途に応じてパーツ(補強材やクッション材など)をとりつけるオーダーメイドのインソールです。「クイックオーダーインソール」は、専用の成形マシンで作るヨーロッパの素材をベースとしたクイックオーダー仕様。「バネインソール」は、用途や厚さの異なる全9種をラインナップする既成のインソールです。
「バネインソールはサイズに合わせてカットするだけでご使用いただけます。費用対効果でいえばこのバネインソールが一番です。プロ野球選手などもこのインソールをシューズに使用してプレイしている方もいます」と広瀬さん。
「バネインソール」は裏側には強度を持った素材で作られた“コントロールカップ”が装着されていて、このコントロールカップには、足裏の3本のアーチのバランスを理想的な状態に保持するためのテクノロジーがつまっています。
「たとえば、バネインソールの最大の特徴はインソールの外側の形状です。第五中足骨(足の甲の外側の骨)の突起を点ではなく面で支えることで負担を分担させ、内アーチだけでなく外アーチもしっかりサポートし、左右の体軸移動をスムーズにします」。
また「Bane」のロゴあたりでカカトの骨の突起をサポートするため、カカトが安定し、グラつきを抑えることができます。それにより骨と骨の隙間が埋まり、3本のアーチを安定させる効果があるのだそうです。
「バネインソールにカカトを合わせ、のっている状態(写真の位置)が、足裏の3本のアーチが理想的な状態だといえます。人を1つの建物と考えたとき、足裏は建物の土台になります。この土台がしっかり安定することで、その建物は安定した作りになるように、足の骨格が整えられると、身体のゆがみが補正され、自然な美しい姿勢になります」
「1つ実験をしてみましょう」と広瀬さん。バネインソールに乗らない場合と、乗った状態で、お尻を真下におろすイメージで屈伸をします。バネインソールに乗らないで屈伸をした時(上の写真)、左膝が内側に入っているのがわかります。これは左足の足裏アーチが正しい位置になく、カカトが外側に倒れてしまっているため、それを補おうと膝が内側に入ってしまっているのだそう。また、右側の腰が上がり、左の肩も落ちているのがわかります。
一方、バネインソールの上に乗って屈伸をすると(下写真)、両膝がまっすぐ正常に曲がっていることがわかります。これはバネインソールに乗ったことにより、足裏の3本のアーチが正しい位置になったため、カカトから上の膝がまっすぐになり、腰、肩も正常な状態に組み上がっていくのです。
バネインソールのパフォーマンスを体感する
「足裏の3本のアーチが理想的な状態になると、体のバランスが保たれ、肉体的なパフォーマンスまで発揮させることができます」と広瀬さん。バネインソールのパフォーマンスを確認できるボディチェックを見せてもらいました。
両腕を頭の後ろで組んだ肩に、広瀬さんが全体重を乗せると、体が傾いてしまいます。
続いてバネインソールに足を乗せた状態で同じことをしてみます。すると、どうでしょう。広瀬さんは先ほど以上の力を入れているにも関わらず、ビクともせず、体をまっすぐに保っています。
同じことを筆者も体験したのですが、バネインソールの上に乗った状態で、屈強の広瀬さんに全体重をかけられても、同様の結果を体感し、思わず「スゴイ!」と口走ってしまうことの連続。これまでインソールというと、大きい靴をフィットさせるためだけのものと思っていましたが、1枚のインソールでここまでの効果が得られるとは想像だにしなかったことでした。
「バネインソールは発売当初はパフォーマンス向上を目指すトップアスリートに多く支持されましたが、いまではその評判が広がり、普段の生活のシーンで利用する人も増えています。街のなかで足を酷使するビジネスマンや、ハイヒールで足を痛めてしまっている女性、足腰にトラブルを抱えはじめたお年寄りの方など、バネインソールはさまざまなシーンでその効果を発揮します」と広瀬さん。興味のある方はぜひ一度「ハッチェリー」に足を運んでみてはいかがでしょうか。
ハッチェリー
東京都世田谷区南烏山4-22-11 1F
電話:03-5313-2688
出典: インソール、靴の中敷き、オーダーインソールの専門店 | 足にこだわるオーダーインソールの店ハッチェリー