大正時代に皮革の卸業からスタート

「サーパス浅野」の創業は大正時代までさかのぼります。「私の祖父が、浅草の地に皮革関連の仕事を起こしたことが『サーパス浅野』のはじまりです。それが何年だったかというのは不明なのですが、父は大正8年の生まれで、父が生まれたときすでに祖父はこの仕事をしていたので、100年ほど続いていることになります」と3代目・浅野哲雄さん。

東京・浅草は、今なお革靴の生産量日本一を誇る“靴の町”です。その歴史は、明治時代の初期に軍靴の製造からはじまり、戦後は、注文靴(オーダーメイド靴)へと移行して、飛躍的に発展していきました。注文靴の一大産地だったため、靴を作る職人や加工業者をはじめ、靴の卸問屋、底やヒールなど靴の材料を扱う販売店、靴の品質を調査する検査所や研究機関など、革靴に関するものはすべてそろっていたのだそうです。

戦時中、浅野さんのお父さんも兵隊にとられ、物資の供給もストップしたため、一時、休業することもあったそうですが、戦後、焼け野原だったこの地に再び店を構えて、皮革の卸売業を再スタートしました。

昭和40年代に入ると、それまで職人の手によって1足ずつ作られていた靴は、機械によって製造されるようになり、大量生産の時代へ入っていきます。合成ゴムの技術の進歩によって性能が著しく向上し、安くて耐久性のある靴底を大量に作ることができるようになりました。

その結果、高価で扱いが難しい革底よりも、安価で機械的製造に向く合成底へととって代わっていきました。皮革の卸売業を中心に行なっていた「サーパス浅野」でも、合皮の本底やパーツ、それにまつわる道具などを扱いだし、業態は変化していったのだそうです。

「父に聞いた話では、この頃は、機械によって靴を作るメーカーと、ハンドメイドの職人さんとが混在していた時代だったようです。そのような時代に合わせて、当社は、メーカーと職人さんのどちらの要望にも応えられるよう、一気にいろいろな材料やパーツなどを扱いだしたのだそうです」

リペア時代の到来

その後も、靴製造の機械化はますます進み、靴職人の数は減少の一途をたどりました。昭和47年(1972年)には靴修理サービスのチェーン「ミスターミニット」が日本に上陸。三越日本橋店と高島屋日本橋店に修理スタンドをオープンしました。

「私が入社した昭和50年代では、リペアの会社が多く立ち上がっていました。そしてそのような時代の流れとともに、当社のお客さんにも“リペア”へのニーズは高く、『サーパス浅野』もリペアを柱とする業態へと変わっていきました」と浅野さん。

リペアの材料としては、本底(オールソール)、半張り(ハーフソール)、中敷(インナーソール)、ヒール(紳士かかと)、リフト(婦人かかと)、シートといったものがメインとなり、それらを使うための接着剤や釘などが必要となってきます。

「家電や自動車の修理とはちがって、靴の修理にはマニュアルがありません。靴の修理には知識や経験が必要であり、職人さんのクリエイティブな部分も要するのです」と浅野さん。たとえば10のうち7は、基本的な修繕方法によって修理ができるのだけれど、残りの3は、それができない。その3の部分は、修理をする職人さんの経験がものをいう部分であり、いかにして直すかを想像して行うクリエイティブな部分であったりするのだそうです。

「その部分に対して、既存の材料で対応できるようであれば既存の材料で直します。でもそういった材料がない場合、職人さんに『こういう修理をしたいのだけれど、なにかないか?』と。われわれの方に投げかけてくれるんです。そのとき、職人さんが必要としているモノに当てはまるものがなければ探しに行きます。探してもなければ作ることもあります」

お客さまからのリクエストに一つひとつ応えていき、その必要とする材料をそろえていく。新たにそろえた材料は、お客さまがまたいつ必要とするときのために在庫を用意しておく。「サーパス浅野」の店内には、膨大な材料が並んでいますが、さらにお店の裏には大きな倉庫があり、そこには数え切れないほどの材料が在庫されています。

「お客さまからいろんなニーズをいただいて、それを形にする。それが我々の生命線だと思っているので、お客さまのニーズに合わせて、どんどん取り扱い商品が増えていくという結果になります。修理を依頼するお客さんがいれば、修理をする側の方は、それに応えなければいけないわけです。私たちはそこに敏感に反応していかなければいけないと思っています」

豊富な品ぞろえと欠品を起こさないこと

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