浅草の製靴産業に再び注目が集まる

東京・浅草は、浅草寺を中心に観光の町として世界にその名を馳せていますが、“靴の町”としても浅草は繁盛を極めた時代があり、今なお、浅草には多くの皮革産業が集まり、製靴は浅草の地場産業となっています。


浅草で靴づくりが始まったのは明治時代。軍靴の需要が拡大することを見込んだひとりの商人が浅草の地で製靴をスタートさせたのがその始まりと言われています。皮をなめすのに大量の水を要するのですが、浅草は隅田川に近いという地の利があったためだとか。

1950年代に入ると、接着技術が向上し、それまで手法で行われていた作業がのり付けによる製法にかわり、大量生産が可能になったことから急速に発展。60~70年代には300社以上のメーカーや卸問屋、材料を扱う店や加工会社などが軒を連ねたのだそうです。


その後、70年代、80年代には貿易における関税の制度が変わり、輸入品がどっと押し寄せ、また海外への向上移転などもあいまって、繁盛期の1/3程度まで店舗数は減りました。しかし最近では、若い人たちの間で1足、1足つくるハンドメイドの製靴に注目が集まっており、若い職人さんがこの町を訪れ、工房などがあちこちにオープンしています。

靴づくりの設備が整った場所を提供する

1947年に「武田製靴」は浅草の地に創業しました。紳士靴、婦人靴、スポーツシューズなどの企画製造販売を行い、武田和芳社長が「武田製靴」を継いだのは約25年前。


靴の大量生産は当たり前の時代において、武田社長はかねてより、日本で大量生産を続けることの難しさ、労働賃金の安いアジアのなかで日本が生き残ることは困難だと感じていたそうです。

「他の産業と同様に、靴の世界も高齢化と空洞化の信仰で国内産地は疲弊していました。それならば、靴の量産はアジアの他の国々に任せて、付加価値の高い意義のあるものづくりをしなければいけないのではないか。浅草に残すために何かをしたいと思ったのです」と武田社長。


企業向けセミナーや海外視察などにも参加し、行き着いた答えが、独立志向の強いクリエイターを募り、靴づくりの設備が整った工場を使ってもらおうというアイディアでした。そしてそのアイディアを形にするにはどうしたら良いのか。自問自答を繰り返すなかで、考えがまとまりそうな頃に東日本大震災が起こりました。


「夢を夢のまま、いつまでも持ち続けてはいけない。実行に移さなければと思いました。自分の意思とはまったく関係なく、突然、終わりの日が来ることもあるのだと痛感したのです。そこから猛スピードで準備をはじめ、シェアファクトリーのオープンにこぎつけました」

靴づくりの設備が整った場所を提供する

2012年3月に「シェアファクトリー・アサクサ」はオープンしました。オープン当初、会員は1名だったのだそうです。「説明会を数回開き、シェアファクトリーがどのようなものなのかを説明しました。毎回、盛況だったのですが、当時はまだオフィスを“シェア”する、ということは想像することが難しかったのだと思います」

広さ約50坪。2~3坪の部屋貸しスペースと共有レンタル作業スペースを用意し、始まったシェアファクトリー。職人さんが1人、シェアファクトリーに入り、稼働しはじめると、噂を聞きつけ見学者が増え、1人、また1人と会員が増えていったのだそうです。


「会員には、工場内にある製靴設備をリーズナブルな価格で貸与しています。簡単なオフィスとして使ってもらっても良いですし、靴づくりにかかわるネットワークを紹介したり、展示会への出展支援などをおこなっています」と武田社長。

集まっているのは、シェアファクトリーを拠点にフルタイムで仕事をする職人さんや、メーカーに勤めているが自分の靴づくりを目指したい人、OEMの仕事を受けながら自身のブランドを立ち上げた人、特定の利用日を決めて工場を利用する人などさまざま。

人が人を呼ぶかたちで、徐々に会員数は増え、現在は13名の登録があるのだそう。自分では購入することができない設備が使えることや、物作りに行き詰まったときなどに仲間に相談ができる、仲間同士で刺激し合いながら仕事を共有するなどメリットは多い。

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