靴職人を夢見て 単身で渡ったイタリア・フィレンツェでの暮らし

「リペアの仕事の醍醐味は、いろいろな靴を見られること」
そうお話くださった大和潤平さんは、単なる靴屋ではなく、その靴が生まれた国の歴史や文化と革製品の魅力を伝えることを大切にする「World Footwear Gallery(以下、W.F.G)」の修復工房「W.F.G REPAIR FACTORY」で、リペア職人として働いています。修復の内容にもよりますが、大和さんが1日に手がける修理は15~20足ほど。オーダーに忠実に応え、可能な限り靴を蘇らせています。そんな大和さんと靴との出会いは大学時代に留学先で訪れたイタリア・フィレンツェでのこと。

「当時は明確な目的があったわけではなく、社会人になる前に留学経験をして箔をつけたいという思いでした。フィレンツェを選んだのはもともとヨーロッパの文化に興味があったからです。その時の経験が今の仕事に繋がっているのだと感じます」

3ヶ月間、イタリア語を学びながらフィレンツェで過ごした大和さん。屋根のない美術館と称されるフィレンツェは、ルネサンスが花開いた芸術文化の街。そして、古くからの革産業が盛んな街としても知られています。郊外には、有名ブランドのバッグや靴の工房がいくつもあり、大和さんは自然と靴工房を目にする機会が増えていったと言います。

「祖父がかばん職人だったことも影響し、手仕事への憧れが潜在的にあったように感じます。フィレンツェで職人たちの仕事を目にすることで、靴職人になりたいという思いが強くなりました」

大学卒業後、靴の卸業者に就職した大和さんですが、その時すでにイタリアで靴職人の修行をすると決めていたとのこと。社会人としての経験を積みながら資金を貯め、26歳の時に再びフィレンツェに渡ります。

「大学時代に通っていた語学学校のすぐそばに、「ロベルト・ウゴリーニ」の工房があり、修行をするならここと決めていました。とはいえ、思い切って門を叩いたはいいけれど、受け入れてくる保証もなく、ツテもない状況。語学学校でお世話になったスタッフの口利きもあり、なんとか弟子入りさせてもらうことができました」

日本でも半年ほど靴制作の学校に通って勉強をした大和さんですが、職人としては素人同然。念願の工房に弟子入りはできたものの、靴作りの工程に携わるまでは半年もの時間を要したと言います。

「工房では丁寧に教えるとうよりも、見て覚え、わからないことは自分から聞きにいくという教え方でした。靴は250もの製造工程があり、ただ見ているだけでは勉強にならない。もっと靴作りを学べるところがあるんじゃないかと思って見つけたのが修復工房でした」。

修復工房との出会いによって開かれたリペア職人という道

午前中は修復工房で修行を積み、午後は靴作りの工房へ。忙しい毎日の中で腕を磨いていった大和さん。いつしか、大切な靴を修理して履き続けるイタリア人の物を大切にする文化に魅せられていきます。

「修復技術を学ぶうちに、リペアは感覚的に自分に合っていると感じました。高級靴から婦人靴など、いろいろな靴を見ることができるのが修復の面白さです。パーツをバラして見ると靴職人の丁寧な手仕事がわかり、これは修復工房でしか見ることがことなので楽しかったですね。」。

靴にはその人が歩んできた人生が刻まれています。なかには20年以上修理を繰り返し大切に履いている靴もあり、靴に触れている時間は至福の時だったと語る大和さん。
2年半の修行を終え、29歳で日本へ帰国。リペア専門店に就職をし、さらに腕を磨きます。フィレンツェの修行仲間から紹介され、現在のW.F.G REPAIR FACTORYに専属のリペア職人として入社したのは2013年のこと。以来、お客様の大切な一足を蘇らせています。

靴を愛する人のために靴を愛する職人が修復するということ

靴をこよなく愛する大和さんにとって、お客様の靴をお預かりし、可能な限り蘇らせることは天職。ところが、イタリアのリペア職人は職業として修復をしており、決して靴好きではないと言います。

「修復職人はあくまで食べて行くための仕事。数をこなすために注文通りのこと以上は手をかけないのが基本です。もちろん、お客様の要望を満たすことが大前提ですが、可能な限り靴を蘇らせたいという思いから、ご提案をさせていただくこともあります」

当たり前のことですが、靴が好きな人は靴にこだわりを持っています。大切な靴を修復するときは、同じように靴を好きな人に修復してもらいたいと思うもの。イタリアで学んだ技術と日本人ならではの丁寧な手仕事と感性を融合させた大和さんの職人技は、多くの靴愛好家から絶大な信頼を得ています。

「他のリペアでは満足できなかったというお客様が、僕に修復を任せてよかったと言ってくれる瞬間が何より嬉しいですね」

スピード勝負のリペア専門店とは異なり、一足一足と丁寧に向き合うW.F.G REPAIR FACTORYの修復はどうしても時間がかかってしまいます。お待たせするぶん、オーダーに忠実に応えることはもちろんのこと、すぐに履けるよう丁寧に磨いてお渡しすることが大和さんのこだわりなのだとか。
最後に、これからの展望についてお聞きしました。

「イタリアの街を歩いていると、おしゃれが板についているのは40代〜50代以上の人たちです。その理由は若いうちは肉体が美しいから着飾る必要がないという意識が根付いているからだと思います。良い靴を長く履き続けるイタリアの文化と、日本人の器用さ、技術や流通文化を融合させ、イタリアと日本の架け橋のような存在になれたら嬉しいですね」。

靴に魅せられ、靴を愛する大和さんの修復技術は日本の誇り。あなたの大切な一足を、W.F.G REPAIR FACTORYに託してみませんか?

DATA

World Footwear Gallery 銀座店
東京都銀座5-6-6 すずらん通り
電話 03-3572-6811
営業時間:11:00〜20:00
定休日:無休(大和さん不在日毎週水曜日、第2日曜日、第4木曜日)

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